鎌倉これからを見る写真展と
学生研究発表でした

鎌倉バリアフリー研究会 小木和孝

 今年の鎌倉バリアフリーシンポジウムは、新設の研究会サイトに載せた好事例写真展と神奈川大学学生研究発表でした。初めてのウェブ交流です。訪れた方々に深く感謝しています。今まで15回重ねたシンポジウムとの違いは、目にも心にも残る展示と交流だったことです。

 とりわけ印象的だったのが、写真投票の結果です。安心してバリア少なく街を行き来する3つの要件、

(1)段差解消
(2)案内標識
(3)バリアフリートイレを含む身近のトイレ

以上の3つのトピック写真が、投票でしっかり選ばれています。休息イス、ゆったり歩道など、行き来の環境対策も選ばれていました。

 大学から鎌倉に出向いてくれた学生たちの研究発表への反応は、これからに期待です。バリアフリーマップ一、地元の人たちと行き来する市民、観光客をつなぐ心のバリアフリーへの今後へのステップになります。

 今回の好い事例写真展示と研究発表は、市、市民、来訪者の行き来バリアフリーへの共通のこころ根をこれからにつないでいく一歩として、これからの「進歩」を課題とした交流に、貢献できたと思います。その意味で、今回の第16回「シンポジウム」は、思い入れを添えて言えば、よいバリアフリー「進歩自生む」でした。

第16回鎌倉バリアフリーシンポジウム
のご報告

1.鎌倉行き来バリアフリー写真投票

 第16回鎌倉バリアフリーシンポジウムを2020年12月26日から翌21年1月25日までインターネット上で開催しました。

 当初、例年通り多くの皆さんにお集まりいただき、グループ討論を含めて行いたいと考えていましたが、新型コロナウイルスによる感染症が年末年始にかけて第3波の大きな波が押し寄せ、皆さんにお集まりいただくことができませんでした。

 そこで、感染拡大防止の観点から、インターネット上で行うこととし、バリアフリー研究会の独自のホームページを立ち上げました。このホームページ上で過去15 回毎年開催してきたシンポジウムで展示と写真投票が累積した「鎌倉のバリアフリー好事例写真」を公開する目的で93点選んでおりましたが、インターネットによる発表に変更したことにあわせて更に良い事例32 点を選びホームページ上に公開しました。そしてホームページを訪れた方に 良い事例4 点を選んで投票して頂きました。また、学生研究員による研究発表もこのホームページ上で行いました。

 当初12月26日から2021年1月25日の間に多くの方にホームページに訪れていただき、投票していただきました。1月25日で第16回鎌倉バリアフリーシンポジウムは閉幕しましたが、さらに多くの方にこの写真展をご覧にいただき投票できるように、3月31日まで閲覧・投票について順延し177票の投票をいただきました。

 この間当研究会は、障がい者が安心して行き来できるためには三つの視点(段差解消・案内標識・トイレの配置)が重要であると提起してきました。今回の写真展では、この3つの課題とそれをまとめた「行き来」の4点で写真のグループを構成しました。その得票数を円グラフにしました。

 ここから注目できることは、スロープなど段差の解消と行き来しやすい道路に関心が集まっていることがわかります。また目標物に到来する標識にも高い関心があるようです。そしてトイレへも関心が寄せられました。

 鎌倉バリアフリー研究会は、これからも鎌倉の良い事例を顕彰し、もっともっと行き来ししやすい鎌倉を皆さんと作っていくために、第17回鎌倉バリアフリーシンポジウムを、コロナ禍の中、可能な形態を模索しながら準備していきたいと考えます。なにとぞ、皆さんのお力添えをお願いいたします。

得票数の多かった写真

 得票数の多かった順に写真を並べてみると下記のようになります。

1位(18票) 作品08:江ノ電長谷駅前踏切
2位(17票) 作品16:銭洗い弁天経路案内
3位(11票) 作品13:江ノ電バス子供用車いすの案内ポスター
3位(11票) 作品30:鎌倉駅内エレベーターエスカレーター
3位(11票) 作品32:江ノ電バス内車いす固定

1位:江ノ電長谷駅前踏切

 ほかの踏切では危険な車いすで踏切の斜め横断が、安全にできることに評価が集まったようです。

2位:銭洗い弁天経路案内

 迷い行動のあった標識に具体的な指示を加えると、間違いが激減する事例として評価が多かったと思います。

3位:江ノ電バス子供用車いすの案内ポスター

 バスの運転者も普通のベビーカーと勘違いして介助行動に至らない事例もあり、そのことの啓もうをする国交省のポスターに評価が集まりました。

3位:鎌倉駅の構内の車いす利用者などのためのエレベータ・エスカレータ

 狭い駅構内に東西同じような段差がありますがそれを工夫して作ったことに評価が集まりました。構外の自由通路にも工夫が求められます。

3位:バスを利用する車いす利用者

 運転者の工夫でバスの車輪の車止めを車いすの固定に転用する発想に評価が集まりました。

2.学生研究員による発表

 神奈川大学工学部経営工学科社会行動科学研究室(久宗 周二教授)は当会と連携し、鎌倉バリアフリーマップの作成の他、鎌倉のバリアフリーについて調査研究を重ね、2019年は、学生研究員が研究発表を会場で発表しました。

 今回の第16回鎌倉バリアフリーシンポジウムでは、コロナ禍の中で、直接の発表ができず、ポスターによる発表をホームページ上で次の6つのテーマで行いました。いずれも、鎌倉市内のバリアフリーに向けてのさまざまな進展を反映しています。

 この発表には、6名の学生が現地での調査・関係者への取材など、コロナ禍の中にもかかわらず、大変ご苦労をされました。すでに卒業されて社会人になっておられますので、氏名は割愛しましたが、これからの活躍を祈念して、敬意を表します。

1 福祉避難所運営マニュアルのモデル作成

 高齢者や障がい者は災害時健常者に比べ約2倍の割合で亡くなっているがその原因が、避難所生活での疲労、避難所への移動中の疲労、病院の機能停止による医療の遅れによるものですが、40%の全国の福祉避難所指定施設は、福祉避難所運営マニュアルをつくっています。そこで、福祉避難所のモデルを作成しました。

 さらにこの「マニュアル」に具体的数字や指示がなされることが望ましいですと提案したところ、神奈川県川崎市と静岡県静岡市など全国10の自治体からコメントを頂きました。

2 バリアフリーマップのアイコンと地図の配色

 バリアフリーマップを、色覚異常の方を含めてより見やすく使いやすくするためのカラーコントロールについて提案をしました。

3 高齢者と身体障がい者向け運動コースマップ

 高齢者や身体障がい者の運動不足の解消について、実際の公園での移動の運動負荷について調査しました。計測機器を用いて実地調査し、高齢者の消費エネルギー、車いす利用者の消費エネルギーについて提案しました。車椅子を利用する身体障がい者2名にマップを評価して頂き、バリアフリートイレの写真などをより有益なマップを作成できました。

4 聴覚障がい者に向けたバリアフリー情報の提供

 横浜市の特別支援学校へヒヤリングを行い、外出する際にどのような情報が聴覚障がい者に必要なのか調査しました。その結果を踏まえて、聴覚道路情報→歩道幅,ガードレールや路側帯の有無について調査、店舗・施設→手話や筆談,フェイスシールド着用の可否、緊急時の誘導の確認と付近の避難所の情報を掲載した、鎌倉駅東口から鶴岡八幡宮の聴覚障がい者に向けたバリアフリーマップを提案しました。 

5 バリアフリー情報を考慮した最適経路の表示

 バリアフリーマップを作成するにあたって、車いす利用者の場合でも、自走式と介助式利用者では必要とする情報が違って来ます。これら経路による条件の違いを含めて数値化することで、最短経路を提案しました。

6 志摩スペイン村のバリアフリーマップ

 三重県志摩市のテーマパーク「志摩スペイン村」を地元出身の学生が、推奨する経路の道の傾斜や状態をマップで示すとともに、バリアフリー設備を文章や写真、動画で示すことにより、利用者に対しての情報提供を行いました。

第16回鎌倉バリアフリーシンポジウムへのご協力、
ご閲覧に感謝申しあげます。
皆様のご支援を今後につなげていきます。

どうもありがとうございました!